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2020年度理事長所信 Message
所信
~魁志を纏い、覚悟を持って持続可能な地域の未来を描こう~
第55代理事長 江藤 将太
-はじめに-
「新日本の再建は我々青年の仕事である」という覚悟と情熱を纏い、日本青年会議所は 設立されました。それから 15 年後の 1966 年、我々が住み暮らすこの山鹿の地にも、明 るい豊かな社会の実現を目指し、青年会議所の灯がともりました。以来、創始の頃より 先輩諸兄姉は、高い志と強い覚悟をもって、その時々の地域が抱える課題に挑戦されて きました。その姿は、我々が羽織る法被の背中に「魁」という一字となって、約半世紀 にわたり脈々と受け継がれてまいりました。「魁」とは、他の人々に先んじて何かに挑 戦するという意味であります。我々は、その志や姿を尊び、「魁」の精神を継承し、魁 志を纏い、この地域の様々な課題に対して、持続可能な地域の未来の為に何ができるの かということを真剣に取り組んでいく所存です。
現在の日本は、少子化に伴う人口減少社会が始まっております。私たちが住み暮らす 山鹿に於いても例外でなく、1 市 4 町の合併から 15 年が経過し、合併時から約 5 千人 もの人口が減り、小中学校の統廃合も余儀なくされました。人口減少に伴うこの地域の 市場規模の減少を考えると、中長期的な見通しは、楽観視できません。近年は地方創生 を国の政策とした取り組みが叫ばれ続けていますが、これは我々が住み暮らす山鹿に於 いても、自治体としての維持が困難な状況が目前に迫っていることの表れではないかと 考えます。しかし、そのような状況だからこそ、“今”を傍観するのではなく、チャン スと捉え、我々は行動していかなければなりません。
元号は平成から令和となり、AI(人工知能)などの更なる進化により、これまで経験し 得なかったことが当たり前のこととなりうる新たな時代へと突入する、大きな時代の転 換期を迎えます。そのような時代だからこそ、安易な考えを振り払い、地域の新たな価 値の創造に繋がる運動を展開していかなくてはならないと考えます。
本年我々は、持続可能な地域の為に、謙虚で柔軟かつ迅速に対応しうる組織となり、守るべきものと変えるべきものを見極める力を醸成し、前例にとらわれない新たな発想で、魁志を纏い、覚悟を持って一年間邁進してまいります。
-未来に繋がるまつり-
我々が住み暮らすこの山鹿地域は、3 世紀中頃から 7 世紀中頃に築かれた古を代表する古墳時代の繁栄を始め、夏の風物詩である山鹿燈籠まつりの創始にまつわる景行天皇 の伝説、人々の心と体を癒す山鹿温泉など、その時代ごとに文化を通した物語がありま す。そんな地域であるが故に我々は、とりわけ伝統文化の伝承は非常に重要であると捉 えております。特に山鹿燈籠まつりに於いては、約 600 年前の室町時代から奉納されて いたとされるまつりの本義である上がり燈籠の発信を行ってまいりました。この運動の 根底にあるものは、無形であるまつりの決して揺らぐことのない尊き「心」です。その 「心」が、燈籠の優しい灯かりとなって、人々を魅了し続けているのではないでしょう か。一方で、近年まつりを支えてきた地域の繋がりが希薄化し、元来燈籠まつりが持つ 「心」が伝承されにくくなってきているのではないかと感じます。そのような現状だか らこそ、我々が当事者意識を持って行動しなければなりません。不易流行という言葉が示すように、時代と共に変わっていく伝統と変わらない伝統をしっかりと見極め、地域市民を含めた参画する皆が、この地域になくてはならないかけがえのないまつりと成るよう、連綿と続く歴史を受け継いでいく世代への架け橋となり、青年らしい思想で、覚悟を持って挑んでまいります。
-文化を通した青少年育成-
この地域には菊池川をはじめ、自然を通した文化が豊富にございます。とりわけ小学生時代の私も、友人と川や山といった自然で汚れることも気にせず、泥んこになって遊 びました。思い返すと、今でも楽しかった記憶が甦ります。しかし現代の子供たちは、 温暖化等による自然環境の変化、またオンラインゲームや SNS 等の著しい進歩による社 会的環境の変化の中で、文化を通して人と人との心が触れ合う機会が少なくなったので はないかと感じます。本年は、この地域の資源や溢れる文化を、刺激的な原体験を通し て、地域を担う次世代の心の育成に挑んでまいります。
-未来への架け橋となるひとづくり-
まちづくりとひとづくりの両輪で運動を展開する青年会議所の最大の魅力は“機会”の提供であると考えます。しかし、その機会は求めるだけでは何も得るものは無いのかもしれません。その機会を通じて自分に何ができるのかを考え、能動的に行動してはじめて、様々な可能性を見出すことに繋がると考えます。自ら考え行動する人が一人でも多く増えることで、志を同じくする会員同士が感化され、その先に自分の利益のみを追求する利己的な考えから離れ、他を慮る利他の心が育まれるものと確信します。本年は、あらゆる機会を成長の場ととらえ、この地域の持続可能な社会の構築に繋がるよう、全会員で挑んでまいります。
-心の輪で繋げる仲間づくり-
我々は恩送りの団体であります。前人樹を植えて後人涼を得ということわざがありますが、暑い日差しから逃れて木陰で休むことができるのは遥か昔にその木を植え、育て た人々がいたことにほかなりません。私が学んだ青年会議所とは、未来の人々の為に、 遥か昔に木を植える、そういう心溢れる団体です。1 市 4 町の合併から 15 年が経ち、 少子高齢化が進みながらも約 5 万 2 千人もの市民が住み暮らすこの地域に於いて、近年 は 35 名前後の会員数で活動してまいりました。 しかし、より地域に根差した運動を展 開し、活動するには、現状の会員数に満足してはなりません。“まちがひとを育て、ひ とがまちを創る”という考えを持続可能にするには、地域の課題解決や魅力ある地域の 構築に向けて、志を共にする力強い新たな仲間と心を通わせ、その輪を拡げて行くこと が必要不可欠であります。故に我々は、責任世代と呼ばれる青年経済人と交流を密に図 り、地域の未来を創造できる人材の輪を拡げてまいります。
-創立 55 周年認承 50 周年に向けて-
来たる 2021 年に一般社団法人山鹿青年会議所は、創立 55 周年認承 50 周年を迎えます。半世紀に渡る歴史は、先輩諸兄姉の築き上げられた功績の賜物であり、その時々の運動は、道標の如くこの地域を照らす灯かりとなっています。我々はこれからも、先輩方と同様、未来を照らす灯かりを絶やしてはなりません。いつの時代も JC は、時代に 先駆けて運動を展開してまいりました。本年が最終年度となる認承 40 周年代テーマ 「文化を通して地元を愛する人を育てる」を基にした運動の検証をし、50 周年代に一 般社団法人山鹿青年会議所が進むべき道を見出してまいります。そして、魁志を胸に、 持続可能な地域の未来を描き、新たな時代へ歩みを進めてまいる所存です。
-持続可能な組織であるために-
青年会議所という名の通り、我々は全て会議で議論を重ね、慎重な審議を経てはじめて運動を展開し発信を行います。その事業をしっかりと地域へ伝えていくために重要に なるのが、組織の在り方です。そもそも人は、役割は違えど、各々の組織に属していま す。その組織に於いての役割は、大きく分けると統率する側と、支援する側に分類され ますが、一番重要になるのは、お互いが心を通わせることにより深まる相互理解である と考えます。現代のコミュニティは、SNS 等の進歩により、言葉を介さず、簡単且つス ピーディーになりました。しかし、それだけでは、繋がりが希薄であると考えます。何 か事業を達成しようとした時ほど、心を通わせた取り組みが一番大事であり、大切にし なくてはならないことだと考えます。そうであるが故に、言葉掛けを通した原点に立ち 返り、心通う取り組みを行ってまいります。一方で、厳しさばかりではなく、楽しみも 体感できるよう、メリハリのある運営をしてまいります。その為にも、謙虚且つ他を慮 ることのできる心が通い合う仲間で構成された価値の高い組織を構築してまいります。
また、青年会議所には、出向という素晴らしい出会いによる機会がございます。この新たな仲間との出会いは、気付きや学びをもたらし、自己成長への大きな機会になるものと確信します。そして、この地域市民の為に活動されている関係諸団体との垣根を超えた関係をより密に構築して、魅力ある山鹿の未来を共に描いてまいります。
-結びに-
2014 年 5 月に先輩の誘いで右も左もわからぬまま入会した当初は、常に考え方が利己的であり、発する言葉の主語は決まって“自分は”でありました。しかし、そんな私 を、多くの先輩方との出会いや JC 活動を通じたいろいろな機会を得て、この地域を想 い、何事にも挑戦する人間に成長させていただきました。これは、幾度となく誘ってく れた先輩方は勿論、唯一無二の団体である青年会議所のおかげです。この青年会議所は 20 歳から 40 歳までの尊い青年期を預けるに値する素晴らしい団体であります。多くの 先輩も経験されたであろう意識の向上を伝えられる側から伝える側となり、己の言葉に 責任を持ち、魂を込めて全会員誰一人取り残すことなく、一丸となってこの地域の未来 の構築に、魁志を纏い、覚悟を持って挑戦してまいります。