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2019年度理事長所信 Message
所信
「変革」
~時代に求められるために~
第54代理事長 江藤 彰洋
-はじめに-
1966年、高度経済成長期。日本の人口が1億人を超えたこの年に、強い信念と理念、そして高い志を持った青年が集い、山鹿青年会議所の火が灯されました。以来、明るい豊かな社会の実現を目指し、ひたむきな情熱と絶え間ない努力で、青年の運動が受け継がれてきました。私たちが住み暮らす山鹿は、山鹿燈籠の創始にまつわる景行天皇の伝説を始め、チブサン古墳に代表される古墳時代の繁栄、平安時代の書物に記載されている山鹿温泉の開湯、菊池川流域の米作りと水運による江戸時代の発展、そして明治時代には県内2番目の規模の都市として栄えた歴史があります。とりわけ山鹿の明治三大改革のひとつとして築かれた八千代座は、山鹿の繁栄を象徴していましたが、昭和に入り娯楽の多様化から、時の流れに取り残され一時は衰退していきました。そこで市民による募金活動「瓦一枚運動」で復活への気運が高まり、刺激を受けた当時の青年会議所メンバーの気概と信念が多くの人々に伝わり、やがて大きな市民運動となって、昭和63年には国の重要文化財に指定され、平成の大修理に至りました。これこそが時代に求められた運動であり市民の意識変革、地域社会の変革を起こした青年会議所のあるべき姿ではないでしょうか。1市4町による合併から14年が経ちますが、日本の地方都市がそうであるように私たちが住み暮らす山鹿においても、少子化や若年層の県外流失の影響による人口減少など様々な問題を抱えています。こんな時代だからこそ青年らしく明るい夢を描き、当事者意識を持って地域や他者のために情熱を持ち行動し続けることが必要です。30年続いた平成が終わりを告げ新たな元号となる本年、私たちは時代の転換期に身を置いています。この転換期にこそ私たち山鹿青年会議所は変わるものと変わらないものを見極める力、そして自己を「変革」する勇気、社会を「変革」する使命を胸に一年間行動してまいります。
-求められるまち-
私たちが住み暮らす山鹿には、全国的にも有名な山鹿燈籠まつりがあります。景行天皇が九州巡幸の際、進路を見失ったところ地元住民が松明を灯し、お導した先が今の大宮神社であり、松明がのちに燈籠となり奉納されたという起源があります。そして青年会議所では伝統的な、山鹿燈籠まつりの本義でもある上り燈籠の発信を行っておりますが、近年は担ぎ手不足などの問題を抱えています。そもそも日本人にとってのまつりとは、「祈り」「感謝」「願い」といった想いの全てが凝縮されたものであり、その上で革新の連続で出来上がったものが伝統となり、伝統的なまつりとして今日があります。私たちはこの変わらない伝統と、時代に求められるまつりの変革に、若者らしく挑んでまいります。また、「より多く、よりよく」といった物質的豊かさから、「つながり、やりがい」といった精神的豊かさを追求することに人々のニーズが変化していったように、常識や価値観は時代と共に変化していきます。その中で、地域資源を活かした山鹿にしかできない・山鹿だからできるブランドの構築を確立し、市民の皆様が望む新たな価値観を創出することが、誇りを持つことに繋がり、魅力あるまちとして活性化に向かうと考えます。地域に根差した持続的な運動が社会貢献であり、私たち青年会議所の責務です。変革することを恐れず気概と信念をもって市民の皆様、そして時代に求められるまちの姿を描いてまいります。
-求められるひと-
青年会議所は、まちづくりと人づくりの両輪で活動している団体と言われます。その根底にあるのは「まちが人を育て、人がまちを創る」という考えです。本質を見極める目と、謙虚さや素直さを持ち強い信念で地域のために行動できる人材が、まちづくり、ひいては明るい豊かな社会の実現に必要になります。つまり、自己の欠点を認め、目指すべき自己像を確立し、意識を変革していくことで、行動を変え、習慣を変え、人格を変えた結果として、社会を変革することに繋 がるのです。一人ひとりが当事者であることを自覚してもらい、何事にも前向きに挑戦できるように、全メンバーが集う例会を学びの場とし、知識、見識を身に付けた一人の人間として資質を持った人材の育成に努めてまいります。また、より力強い運動のためには志を共有できる仲間との、一人でも多くの出会いが必要になります。人は他者に影響され、磨かれるものですが、そのようにして己を変え見識をつけて成長していかなければなりません。志を共にする仲間が増えれば組織は力強く活性化します。そして力強い組織の活動する姿は、市民運動に繋がり社会を変革する大きな力となります。人や街を巻き込んでいける情熱を持ち続けることが、人の心を動かしていくものと確信します。
-求められる組織-
人は、家族や会社や社会の一員として何らかの組織に属しており、組織に属する以上は属するもの全員にそれぞれ異なる役割があり、引っ張っていく力(統率力)と支える力(支援力)が必要で、片方だけの力では成り立たずに組織は衰退していきます。これは両者に責任者と当事者としての意識が必要であることを意味しており、相互理解と心を通い合わせることが何よりも重要です。また、歴史で証明されているように、時の指導者や組織は時代が選ぶと言われるほど、その時々で求められるものが変化していきます。組織を中心とする集団主義から、個々人の生活を重視する個人主義に移り変わっている現代の日本ではありますが、視点を変えれば、強いスポーツのチームと同じように個の成長が組織の成長に繋がると考えることもできます。変化を恐れない柔軟さと、自覚と覚悟を持った責任ある個の力が集結した、心が通い合う力強い組織を構築してまいります。そして、青年会議所には熊本ブロック協議会や九州地区協議会、日本青年会議所など他LOMのメンバーと活動する場もあります。新たな仲間との出会いによる刺激や学びにより自分自身を大きく成長させてくれます。さらに、共に山鹿地域で活動する関係諸団体との垣根を越えた関係を構築し、より多くの市民の皆様から共感を得て、地域に必要とされる組織を目指し、取り組んでまいります。
-最後に-
青年会議所に入会した当時は、全てが自分ありきで他者を思いやることはあまりなく、ましてや故郷を考えることもありませんでした。しかし、多くの先輩方との出会いや、青年会議所活動による気づき、新たなことに挑戦する機会を得て、地域を想い未来を語るような人間に成長させていただきました。これは何度も入会を誘っていただいた先輩と、唯一無二の団体である青年会議所のおかげです。多くの先輩方も経験されたであろうこのような意識変革を、伝えられる側から伝える側となり、会員一人ひとりが個性を発揮し、様々な事業に挑戦していける環境の構築に努めます。そして自己変革の先にある自己の成長と明るい豊かな社会の実現の両立を目指し、この地域の未来を描いてまいります。一年間どうぞよろしくお願いいたします。