• 2018年度理事長所信 Message

    所信

    挑戦
    ~繋がりを大切に地域の未来を切り拓こう~

    第53代理事長 榊 哲郎

    2018理事長

    はじめに

    1979年、豊前街道沿い、商店が隙間なく立ち並ぶ中町に、私は生を受けました。幼少期、迷路のような路地裏を縦横無尽に駆け回り、休みの日は菊池川での魚釣り、夜の締 めくくりは、約束されたかのごとく仲間が集まるさくら湯で、近所のおじさんから「もう 帰えらんか」と怒られるまで遊んでいました。夏は一歩家を出ると目の前に広がるまつり の風景、今振り返ると、その一つひとつが非常に貴重な体験です。
    大学進学、就職を経て今から10年前に戻ってきた山鹿は、町が広くなった半面、昔の ような活況はなくなっていましたが、一度県外に出て初めて分かりました。水がうまい、 温泉が柔らかい、食べ物がおいしい、物価が安い、まつりが壮大、芝居小屋がある、自然 が近い……そして人々が温かい、すばらしいまちだったのだと。
    そんな時、先輩の紹介で門を叩いた山鹿青年会議所には、帰郷して以来興味がありつつ も、携われず傍観していた山鹿燈籠まつりや、八千代座、さくら湯、山鹿にある自然や文 化、様々な地域資源を生かして地域を盛り上げようと、自分の損得を顧みず時間を使い、 世のため人のために汗を流す先輩の姿がありました。その姿に感化された私の中にも、こ のまちのため人の役に立ちたいという意識が芽生えました。様々な思いやアイデア、豊富 な知識も日々の行動と生き方が伴い、はじめて人々を動かし、地域を良くする原動力とな ります。先輩諸兄姉から学んだ修練と奉仕の姿勢は、私たちが責任世代となった今、果た すべき姿ではないかと考えます。本年、この素晴らしい文化と資源を併せ持つ山鹿地域を 舞台に、我々がこの地域に必要だと考える挑戦に一丸となって邁進してまいります。

     

    未来へ繋ぐ山鹿燈籠まつり

    山鹿の夏の代表的イベント山鹿燈籠まつりは、先人たちの絶え間ない尽力により、上がり燈籠や千人燈籠踊り、花火大会など多くの観光客が集う、全国的に有名なまつりへと進 化してきました。一方で、近年まつりを支えてきた地域コミュニティーの希薄化が進み、 山鹿燈籠まつりが本来持つ「心」が伝承されにくくなっているのではないかと感じます。
    今から約2000年前、第12代景行天皇が九州巡幸の折、菊池川を下流よりさかのぼ られた際、深い霧に包まれ道に迷われた景行天皇御一行を、山鹿の里人がたいまつに灯り をともし、迎え入れ杉山にお導きしたことに由来し、そのたいまつの灯りが山鹿燈籠まつ りの起源と言われます。また歴史の記述に基づけば、現在山鹿燈籠まつりの重要な神事で ある上がり燈籠は、今から約600年前の室町時代には行われていたとされ、現在も各町 内や団体が燈籠を奉納しています。私が子どもの時の上がり燈籠を思い返せば、奉納する際は皆が心をひとつにして町内の発展を神様に願い、直会では共に担いだ仲間同士で酒を 酌み交わし、共感の輪を広めていました。
    古代における道に迷いし人々を、優しい灯りでお迎えした物語や、中世から現代に続く 上がり燈籠において、自身が生かされている町内、商家、団体への感謝と発展を願い、燈 籠を奉納してきた故事から鑑みるに、時代は変われども山鹿燈籠まつりの根幹には、人々 が己の為だけではなく、他を慮り、仲間の輪を大切にしてきた「心」があったと感じさせ られます。この山鹿燈籠まつりに籠められた「心」を伝えていくことが、まつりを未来へ 繋ぐために必要なことであり、現在表面化している、まつりの担い手の減少など様々な問 題解決の糸口になると確信します。本年はしっかりと「心」を伝承し、より多くの人が携 わる山鹿燈籠まつりの構築に挑戦してまいります。

     

    挑戦できる組織であるために

    青年会議所が様々な事業を展開し、成功させていくうえで重要となってくるのは、組織の在り方ではないかと考えます。画期的なアイデアを用いた事業や、綿密な会議を重ね立 てた計画も、組織の支えがあり、はじめて成功へと導かれます。組織において大切なこと は3つあると考えます。1つ目にルールを守ることです。私たちは同じ志を持ちながらも、 仕事や家庭環境が異なります。そのような中、円滑に組織を運営していくには、各メンバ ーが会議のルールや組織の決まりごと、時間や期限などを厳守する必要があります。2つ 目に副理事長、委員長、フォロワーメンバーそれぞれが、縦と横の繋がりを強化すること です。縦の繋がりと横の繋がりが整うことで、スムーズな伝達、意思疎通が可能になりま す。最後に役職の如何にかかわらず、各々が「山鹿青年会議所の代表である」という気概 を持つことです。この気概を持つことは、各々の行動と言動に力強さと責任感をあたえま す。本年この3つの取り組みを行い、挑戦できる組織を目指します。

     

    志を同じうする仲間の輪を広げよう

    組織が活性化していくには、新しい仲間が必要です。志を共にする仲間が増えれば増えるほど、マンパワーとそれぞれが持つ人と人の繋がりを得て、運動を推進する力は大きく なります。また青年の学び舎である青年会議所は、まちづくり団体の要素もありますが、 意識変革団体であると言われます。入会して活動していくうちに、いつの間にかこのまち を少しでも良くしようという意識が芽生え、実行することによって、人と人との繋がりが 形成されていき、まちのことを思い、変えていける力を持った立派な人材へと成長してい きます。近年、山鹿青年会議所メンバーは20名程度で活動しています。山鹿地域が今後 発展していくために、まちのことを思い行動に移せる青年が20名でいいのでしょうか? いや、50名100名と多くなればなるほど、山鹿地域に必ず貢献できると確信します。
    山鹿地域に住み暮らす責任世代である青年たちと、交流をはかり相互理解を深めたうえで、 JCの魅力を伝え、志を同じうする仲間の輪を広げ、組織の活性化、ひいては山鹿地域の 活性化に努めてまいります。

     

    自己肯定感、地元への肯定感を育む青少年育成

    近年、子どもが自己肯定感を持つ事の重要性が取りざたされています。この自己肯定感とは文字通り自分を肯定する感覚ですが、「自分が正しいと思うことではなく、ありのまま の自分を受け止め、良い面、悪い面も含めて善しとし、心の中に自分という明確な基準を 設けることが、他者とともに生きる力となる。また現在の自分を肯定し、受け入れなけれ ば、変化という成長を受け入れられない」と言われています。子どもの自己肯定感は本来、 家庭や地域コミュニティーの中で、人と人とのかかわりにより養われますが、核家族化の 進行や地域コミュニティーの希薄化が一因となり、コミュニケーション能力の低下や、自 己を抑制する力の低下に繋がっていると考えられ、子どもたちの自己肯定感を高める取り 組みをすることが、明るい未来への一助になると確信します。また、私たちは認承40年 代テーマに「文化を通して、地元を愛する人を育てる」と掲げました。地元を愛するとい う事は、自己肯定感の意味合いを含むところがあると考えます。ありのままの地元を肯定 することで、変化という成長を受け入れることができるようになります。変化を受け入れ 進化を遂げることはまちの発展に繋がり、逆に変化を受け入れられないということは、ま ちの閉塞感に繋がります。未来の山鹿を担っていく子どもたちに、早い段階から地元への 肯定感を育むことが、将来の地域の発展に寄与するものと考えます。また、たとえ山鹿を 離れ生活しても、心の中に地元の基準を設けられることで変化を受け入れ、自信を持って 各地域に溶け込み、生活していけるのではないかと考えます。本年山鹿地域の様々な自然 や文化をフル活用し、普段の生活では経験できない体験を通して、子どもたちの自己肯定 感、地元への肯定感を醸成する事業を展開してまいります。

     

    自己成長を求め地域の垣根を越えよう

    青年会議所には熊本ブロック、九州地区、日本、世界へと広がるネットワークがあり、
    会員であれば誰でもすぐに行くことができる、出向というシステムがあります。私たちは 先輩諸兄姉が積み重ねてこられた山鹿青年会議所をさらに高めるため、各地で活動する仲 間から多くのことを学び取らなくてはいけません。ひとたび出向するとかけがえのない仲 間が各地にでき、自分の活動領域を飛躍的に伸ばしてくれます。またその仲間から得た学 びは必ず自分を成長させ、山鹿青年会議所ひいては山鹿地域に新しい風を運びます。本年、 山鹿青年会議所から11年ぶりに公益社団法人日本青年会議所九州地区熊本ブロック協議 会会長に川上武君を輩出します。またASPAC(アジア太平洋地域会議)が鹿児島で、全国大会が宮崎で、九州地区大会が天草本渡で、熊本ブロック大会が隣町の菊池で開催さ れます。これは非常に稀有なことであり、私たちにとって全国各地で活動する仲間と、繋 がりを持つ事ができる幸運な年です。この機を生かしてメンバー全員で多くの学びを得た いと考えます。

     

    むすびに

    青年会議所に入会して、幸運にも色々な役職をあたえていただき、様々な事業を構築してきました。思うような結果がでなかった時も、困難から逃げず、まっすぐに挑戦したあ とには、必ず経験とともに、苦楽を共にしたかけがえのない仲間を得ることができ、その 経験と仲間の繋がりによって次のステージでは更なる難題に挑戦することができました。 人は挑戦しているからこそ、己の限界を知り、人の温かさを感じ、他を慮る心を持ち、真 の強さと仲間という繋がりを手に入れることができます。修練・奉仕・友情を掲げ活動す る我々は、責任世代の一員として地域が抱える課題解決に向けて、絶えず挑戦して共感の 輪を広げ、明るい豊かな社会を実現していく必要があるのです。
    山鹿燈籠まつりの「心」を多くの人が理解し、みんなでまつりに参加し盛り上げていく ことができたら、どんなに誇らしいまつりになるでしょう。まちのことを思い行動に移せ る青年がもっと増えたら、どんなに豊かなまちができるでしょう。山鹿に住まう子どもた ちみんなが、自身と山鹿への肯定感を持っていたら、この地域の将来はどんなに明るいで しょう。私たちは人と人、過去と現在の繋がりを大切にし、明るい豊かな社会を実現する ために、また真の強さと新たな繋がりを手に入れるために、妥協することなくまっすぐに 挑戦してまいります。一年間どうぞよろしくお願いします。